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いわき市は昭和41年に、平・小名浜・勿来(なこそ)・常磐(じょうばん)・内郷の5市と周辺4町6村が大合併して生まれた、福島県の浜通り南にある人口35万人の市である。合併当時、新市名が様々な思惑の中でなかなか決まらず、ひらがな表記の「いわき」で、ようやく決着したという経緯がある。
昔、上野駅の常磐線ホームには準急や各駅停車の電車の行き先に「平」と表示されてあったのが懐かしい。現在の「いわき」表示ではピンと来ない鉄道ファンも多いはずである。
このいわき市には、北部は夏井川、南部は鮫川といういずれも阿武隈山系を水源とする二本の川が流れている。そして南部の鮫川上流には何軒かの鰻屋があるが、残念ながら私の口には合わなかった。
そのうち、いわき在住の知人から「『魚栄』【うおえい】の鰻は平で一番だよ。」と聞かされた。美味しい蒲焼きに飢えていたので直ぐに行ってみたところ、店はいわき駅近く、平の盛り場田町の真っ直中にあった。調理場の換気扇が道側にあるので、横町を曲がると、匂いだけで近くに鰻屋があることが分かる。白壁に茶色の縦格子で囲まれた店の入口は、蒲焼きの美味しい匂いの中で、夏場には白地に小さめの字であっさりと「うなぎ」、それ以外の季節には「うなぎ」と大きく染め抜かれた茶色の暖簾が掛かっている。
店に入ると一階はテーブルが2席、小上がりには5卓あり、二階は小人数用の座敷がいくつかある。夏の最中には各所にスダレを施して涼しさを表し、正月には小上がりに役者絵の押絵羽子板をズラッと並べていて、その季節感がとても粋に感じられる。
今回はテーブル席の一番奥に陣取って鰻重の「特」を頼んだが、注文を出した後、主人がテーブル席の脇にある小さな生け簀から鰻を網ですくい、そのまま調理場に持って行った。そのテーブル席からだと、位置的に調理場の脇になるので中が良く見渡すことが出来る。
調理場では息子(らしい人)が裂きを、親父(らしい人)が焼きを、奥さん(らしい人)が御飯と重の準備をしている。外から見ていると正しく家内工業のように見えた。焼き台は炭ではなくガスを使用しているが、焼き台の上では鰻が頻繁にチェックされ、何回も返されていた。
待つこと約40分、出てきた裂きたて焼きたての「特鰻重」には2枚の蒲焼きが一部重なるほどの大きな鰻が乗っていた。見た目にも大きな焼け焦げがない比較的丁寧な焼きで、若干、甘口のタレが御飯にやや多めに掛けられていたが、蒲焼きそのものは柔らかくて大串独特の脂の乗りが十分感じることが出来て、先ずは満足出来るものであった。
 
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